【2026年度版】アスベスト(石綿)事前調査の義務化とは?費用と法改正のポイント解説

【2026年度版】アスベスト(石綿)事前調査の義務化とは?費用と法改正のポイント解説

「解体やリフォームを頼んだら、アスベスト調査が必要だと言われたけれど、本当にやらないといけないの?」「費用がいくらかかるのか見当がつかない」――そんな不安を抱えている建物オーナーや事業者の方は少なくありません。2021年の法改正以降、建築物の解体・改修工事では石綿(アスベスト)の事前調査が原則として義務化されており、違反すれば罰則を受ける可能性もあります。さらに2026年1月からは工作物に関する新たな規制も始まりました。この記事では、アスベスト事前調査の義務化の全体像から、費用の相場、調査が不要になるケース、使える補助金まで、コストと手間に敏感な経営者・事業者の方に向けてわかりやすく解説します。

そもそもアスベスト(石綿)とは?なぜ事前調査が必要なのか

アスベスト(石綿)とは、天然に産出する繊維状の鉱物の総称です。耐熱性・耐火性・防音性に優れていたため、1970年代から1990年代にかけて建築材料として大量に使用されました。しかし、極めて細い繊維が空気中に飛散して吸い込まれると、肺がんや中皮腫(ちゅうひしゅ)といった重篤な健康被害を引き起こすことが明らかになり、現在では製造・使用が全面的に禁止されています。

問題は、過去に建てられた建物の中にアスベスト含有建材がいまだ大量に残っているという点です。解体やリフォームの際にこうした建材を知らずに壊してしまうと、繊維が飛散して作業員や周辺住民の健康を脅かします。この飛散を防ぐために、工事の前にアスベストが含まれているかどうかを調査する「事前調査」が法律で義務付けられているのです。

アスベスト含有建材の3つのレベル

アスベスト含有建材は、繊維の飛散しやすさ(発じん性)に応じて3つのレベルに分類されています。レベルの数字が小さいほど危険度が高く、除去にかかる費用も大きくなります。

レベル 代表的な建材 飛散性 使用箇所の例
レベル1(最も危険) 石綿含有吹付け材 非常に高い 鉄骨の耐火被覆、天井・壁の吹付け
レベル2 石綿含有保温材・耐火被覆板 高い 配管・ボイラー・ダクトの保温材
レベル3 石綿含有成形板・床材 通常は低い(破砕時に飛散) スレート屋根、サイディング、ビニル床タイル

レベル3は通常の使用状態では飛散リスクが低いものの、切断や破砕を伴う解体・改修工事では繊維が飛散するため、レベルを問わず事前調査の対象となります。

法改正の流れを時系列で整理――いつから何が義務化されたのか

アスベストに関する法規制は段階的に強化されてきました。「いつから何が変わったのか」を正確に把握しておくことは、法令遵守のうえで欠かせません。ここでは、大気汚染防止法と石綿障害予防規則(石綿則)の改正を中心に、主な変更点を時系列で整理します。

時期 主な変更内容 根拠法令
2006年9月 アスベストの製造・使用が全面禁止 労働安全衛生法施行令
2021年4月 すべての解体・改修工事でアスベスト事前調査が義務化 大気汚染防止法・石綿則
2022年4月 一定規模以上の工事で事前調査結果の行政報告が義務化(電子システム運用開始) 大気汚染防止法・石綿則
2023年10月 事前調査を行う者の資格要件が義務化(有資格者による調査が必須に) 大気汚染防止法・石綿則
2026年1月 工作物の解体・改修工事でも有資格者(工作物石綿事前調査者)による調査が義務化 石綿則

2023年10月の資格要件義務化が転換点

特に大きな転換点となったのが、2023年10月1日の改正です。この日以降、建築物のアスベスト事前調査は、以下のいずれかの有資格者が行わなければならなくなりました(厚生労働省・環境省発表)。

それ以前は資格がなくても調査は可能でしたが、現在は無資格者による調査は法令違反となります。施工業者に工事を依頼する際は、調査を担当する人が有資格者であることを必ず確認しましょう。

2026年1月――工作物への規制拡大

2026年1月1日からは、工作物(煙突、配管設備、焼却設備、トンネルの天井板など)の解体・改修工事においても、「工作物石綿事前調査者」という新たな有資格者による事前調査が義務化されました(石綿則改正、厚生労働省発表)。工場やプラントの設備を解体・改修する事業者は、この新しい要件に対応する必要があります。

報告が必要な工事の範囲と報告の方法

事前調査はすべての解体・改修工事で義務ですが、調査結果を行政に「報告」しなければならないのは一定規模以上の工事に限られます。ここでは、報告対象となる工事の範囲と、具体的な報告方法を解説します。

報告義務の対象となる工事

2022年4月1日以降、以下の条件に該当する工事では、着工前に事前調査結果を行政(都道府県等および労働基準監督署)に報告することが義務付けられています(大気汚染防止法・石綿則、環境省・厚生労働省発表)。

工事の種類 報告が必要となる条件
建築物の解体工事 解体部分の延床面積が80㎡以上
建築物の改修工事(リフォーム等) 請負金額が100万円以上(税込)
工作物の解体・改修工事 請負金額が100万円以上(税込)

注意すべきは、アスベストが「ある」場合だけでなく「ない」場合でも報告が必要だという点です。調査の結果、アスベスト含有建材が見つからなかった場合でも、上記の条件に該当する工事であれば報告義務があります。

電子システムによる報告の流れ

報告は原則として、厚生労働省が運用する「石綿事前調査結果報告システム」からオンラインで行います。パソコン・タブレット・スマートフォンから24時間利用でき、1回の操作で都道府県等と労働基準監督署の両方に同時報告が可能です。報告のタイミングは、工事の着工前です。着工後に報告した場合は法令違反となる可能性がありますので、余裕をもって手続きを進めましょう。

報告システムの利用にはGビズID(法人・個人事業主向けの認証サービス)によるログインが必要です。まだ取得していない場合は、事前にアカウント作成を済ませておくことをおすすめします。

アスベスト事前調査の費用相場――建物タイプ別に解説

「結局いくらかかるのか」は、多くの経営者にとって最も切実な関心事です。アスベスト事前調査の費用は、建物の規模・構造・調査方法によって大きく変わりますが、ここでは一般的な相場をご紹介します。

建物タイプ別の費用目安

建物タイプ 費用の目安 備考
戸建て住宅 3万〜10万円 簡易な書面調査のみなら3万円程度。検体採取・分析を含むと10万円前後
マンション(専有部分のリフォーム) 5万〜20万円 共用部分を含む場合はさらに高額になることも
店舗・事務所ビル 5万〜50万円 延床面積や建材の種類・点数で大きく変動
工場・倉庫 10万〜50万円以上 工作物(配管・煙突等)の調査が加わると増額

費用の内訳を理解する

事前調査の費用は、大きく「書面調査」「目視調査」「分析調査」の3段階に分かれます。それぞれの内容と費用感を押さえておきましょう。

たとえば、戸建て住宅の解体で書面調査+目視調査に加えて3検体の分析を行う場合、おおよそ「3万円(調査)+6万円(分析3検体)=9万円前後」という計算になります。見積もりを取る際は、検体の数と分析方法を必ず確認しましょう。

費用は誰が負担するのか

大気汚染防止法では、事前調査に要する費用について「元請業者が発注者に対して費用の適正な負担を求め、発注者はそれに応じるよう努める」と定めています。つまり、原則として発注者(建物オーナー・施主)が負担するのが基本です。ただし、実務上は工事費全体に含めて見積もられるケースも多いため、契約前に調査費用が別途なのか込みなのかを明確にしておくことが重要です。

事前調査が不要になるケースもある?対象外の条件を確認

「すべての工事でアスベスト調査が必要」と聞くと、ちょっとした修繕にも高額な調査費がかかるのかと不安になるかもしれません。しかし実際には、一定の条件を満たせば調査が不要(または大幅に簡略化)になるケースがあります。

調査が不要になる主な4つのケース

  1. 2006年9月1日以降に着工された建築物
    この日以降に着工された建物では、アスベスト含有建材の使用が全面禁止されています。設計図書等で着工日を確認できれば、分析調査は不要です。ただし、書面による確認自体は「書面調査を行った」という扱いになり、調査結果の記録・保存(3年間)や報告対象工事での行政報告は必要です
  2. アスベストを含まないことが明らかな建材のみを扱う工事
    木材、金属、石、ガラスなど、もともとアスベストが含まれる可能性がない材料のみで構成された建材を扱う場合は調査不要です
  3. 既存の建材を損傷させない軽微な作業
    釘を打つ・抜く、ビスを取り付ける、畳を交換する、電球を交換するといった、建材そのものを壊さない作業は事前調査の対象外です
  4. 製造年月日等から石綿非含有が確認できる建材
    メーカーが公表するデータベース等により、特定の建材にアスベストが含まれていないことが確認できる場合も、その建材についての分析調査は不要です

ただし、「調査が不要」であることと「報告が不要」であることは別の問題です。工事規模が報告基準(解体80㎡以上、改修100万円以上)を満たす場合は、たとえ調査が不要であっても報告義務が生じるケースがあります。判断に迷った場合は、所管の行政窓口に相談することをおすすめします。

使える補助金・助成金――調査費用の負担を軽減する方法

アスベスト調査にかかる費用の負担を少しでも軽くしたいと考えるのは当然です。国や自治体では、アスベスト調査・除去に関する補助金制度を設けている場合があります。知らずに自腹で支払ってしまう前に、活用できる制度がないか確認しましょう。

国の補助制度(住宅・建築物アスベスト改修事業)

国土交通省は「住宅・建築物アスベスト改修事業」として、民間建築物のアスベスト調査に対する補助制度を設けています。主な内容は以下の通りです。

重要な注意点として、この補助金はすべての自治体で利用できるわけではありません。補助制度がない自治体もありますので、まずはお住まいの市区町村の窓口に問い合わせてください。また、事後申請は認められない場合がほとんどですので、工事の計画段階で早めに相談することが大切です(国土交通省・石綿総合情報ポータルサイト)。

自治体独自の補助制度

国の制度に加えて、独自の補助金制度を設けている自治体もあります。調査費用だけでなく、アスベスト除去工事の費用を補助する制度もあるため、対象となる建物が所在する自治体のウェブサイトを確認するか、窓口に直接問い合わせましょう。補助金には年度ごとの予算や受付期間が設定されており、予算上限に達した時点で受付が終了するケースもありますので、早めの行動が鍵です。

罰則を知っておく――違反した場合どうなるのか

「義務とはいっても、実際に罰せられることはあるのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。結論から言えば、罰則は明確に規定されており、実際に行政指導や是正勧告を受ける事例も出ています。コンプライアンスの観点からも、罰則の内容は正確に把握しておきましょう。

罰則の一覧

違反内容 根拠法令 罰則
事前調査結果の報告を怠った、または虚偽の報告を行った 大気汚染防止法 30万円以下の罰金
石綿障害予防規則に違反した(事前調査の未実施など) 石綿障害予防規則(労働安全衛生法) 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
行政からの改善命令に従わなかった 大気汚染防止法 1年以下の懲役または100万円以下の罰金

特に注意すべきは、罰則の対象が施工業者だけでなく、発注者(建物オーナー)にも及ぶ場合があるという点です。大気汚染防止法では、発注者にも「調査に要する費用を適正に負担すること」や「工期等について施工業者に配慮すること」が求められています。「業者に任せているから大丈夫」と安易に考えず、発注者としての責任を認識しておくことが重要です。

実務で押さえておきたい3つのポイント

最後に、アスベスト事前調査に関して実務上つまずきやすいポイントを3つまとめます。解体やリフォームを検討している方は、事前にチェックしておくとスムーズに進められます。

ポイント1:調査結果の記録は3年間保存が義務

事前調査の結果は、工事終了後も3年間の保存が義務付けられています。調査結果の記録には、調査を行った者の氏名・資格、調査日、調査方法、調査結果(アスベスト含有の有無)などを記載しなければなりません。電子データでも紙でも構いませんが、紛失しないよう確実に管理しましょう。

ポイント2:調査結果は現場に掲示する

事前調査の結果は、工事現場の見やすい場所に掲示することが義務付けられています。作業員や近隣住民がアスベストに関する情報を確認できるようにするためです。掲示する内容は、調査の結果(アスベストの有無)、調査を行った者の情報、工事の概要などです。

ポイント3:見積もり段階で調査の有無と費用を確認する

解体やリフォームの見積もりを取る際には、アスベスト事前調査の費用が含まれているかどうかを必ず確認してください。業者によっては調査費用を別途請求するケースもあれば、工事費に含めて提示するケースもあります。「調査済み」と言われた場合でも、有資格者が行った調査であるか、報告書が発行されているかを確認することが重要です。複数の業者から見積もりを取り、調査の内容と費用を比較検討することをおすすめします。

まとめ――法令遵守はコストではなく「リスク回避」と考える

アスベスト事前調査の義務化は、2021年の制度開始から段階的に強化され、2023年10月の有資格者要件、2026年1月の工作物への拡大と、年を追うごとに対象範囲が広がっています。解体やリフォームを行うすべての建物オーナー・施工業者にとって、もはや「知らなかった」では済まされない制度です。

費用面では、戸建て住宅で3万〜10万円、店舗・ビルで5万〜50万円が相場ですが、自治体の補助金制度を活用すれば負担を軽減できる可能性があります。一方、調査を怠った場合は30万〜100万円の罰金や懲役刑のリスクがあり、さらに健康被害が発生すれば損害賠償責任を問われることもあります。

事前調査にかかる費用は、罰則や健康被害のリスクと比較すれば決して高いものではありません。法令を正しく理解し、計画的に対応することが、結果的に最もコストを抑える方法です。工事の計画段階で早めに情報を集め、有資格者による適切な調査を実施しましょう。

よくある質問

初心者のための用語集

参考サイト

免責事項

本記事の内容(法令・手続き・費用相場・補助金制度・提出先等)は、執筆時点の一般的な情報に基づく参考解説であり、正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。

制度や運用、補助要件、提出期限・様式、費用相場は自治体・地域・個別案件(構造・規模・周辺環境・石綿含有の有無等)により大きく異なり、予告なく変更される場合があります。

実際の申請・契約・工事・廃棄物処理・マニフェスト等の実務は、所管行政機関・関係法令・最新のガイドラインに従い、必ずご自身(または担当者様)の責任で原資料を確認のうえ判断してください。

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